前回のおさらい
第1回では、オートファジーが細胞の「大掃除システム」として働き、健康維持に重要な役割を果たしていることをお話ししました。今回は、オートファジーを活性化する最も有効な方法として注目されている「16時間断食」について、最新の科学的研究をもとに詳しく解説します。
16時間断食とは?
16時間断食(間欠的断食の一種)とは、1日のうち16時間は食事を摂らず、残りの8時間の間に食事を済ませる食事法です。
例えば、夜8時に夕食を終えたら、翌日の昼12時まで何も食べないという方法です。
なぜ16時間なのか?科学的根拠
オートファジー活性化の時間軸
最新の研究によると、「オートファジーを活発に働かせるには、16時間以上の断食が望ましい」とされています(LEE)。一般的に、オートファジーが活性化し始めるのは、空腹になってから12~16時間後と言われています(銀座イグラッドクリニック)。
メタボリックスイッチの仕組み
16時間断食の効果は「メタボリックスイッチ」という代謝の切り替えにあります:
- 最初の10時間:肝臓に蓄えられた糖(グリコーゲン)をエネルギー源として使用
- 10時間以降:糖が枯渇し、脂肪を分解してケトン体をエネルギー源として使用開始
- 12〜16時間後:オートファジーが本格的に活性化
この過程について、専門家は「12時間くらいたつと体内の脂肪が分解されるケトン体代謝が主になってきます」と説明しています(LEE)。
最新研究が示す16時間断食の効果
2025年発表の最新研究結果
2025年に発表された複数の研究により、16時間断食の効果が科学的に実証されています:
- オートファジー遺伝子の活性化: 「Dawn-to-dusk intermittent fasting is associated with overexpression of autophagy genes」(Clinical Nutrition, 2025)では、間欠的断食が肥満・過体重の人々においてオートファジー遺伝子の過剰発現と関連していることが判明しました。
- 筋肉成長への効果: 「mTOR-autophagy axis regulation by intermittent fasting promotes skeletal muscle growth and differentiation」(Nutrition & Metabolism, 2025)では、間欠的断食がmTOR-オートファジー軸の調節を通じて骨格筋の成長と分化を促進することが示されました。
- 脂肪肝への治療効果: 2025年の研究では、間欠的断食により誘導されるオートファジーの正常化が、代謝機能障害関連脂肪肝疾患において肝保護効果をもたらすことが報告されています。
実際の健康効果
16時間断食により期待できる具体的な効果:
- 脂肪燃焼効果:ケトン体代謝により全身の脂肪が効率的に燃焼
- 細胞の若返り:オートファジーによる細胞内浄化作用
- 炎症の軽減:慢性炎症の抑制
- インスリン感受性の改善:血糖値の安定化
16時間断食の正しいやり方
基本的な実践方法
- 食事時間を8時間に限定(例:12:00〜20:00 または 11:00〜19:00)
- 断食中に摂取可能なもの:
- 水
- 無糖のお茶
- ブラックコーヒー
- 塩分補給用の薄い塩水
食事内容の重要性:
専門家は「断食の16時間以外は何を食べてもいいという訳ではなく、むしろ8時間で何を食べるかが成功の鍵」と強調しています(白本クリニック)。
カレー好きの方への実践アドバイス
ランチタイムカレー作戦:
- 12:00〜20:00の食事時間を設定
- 昼食にクラフトカレーブラザーズのカレーを楽しむ
- 夕食は軽めに野菜中心の食事
- 朝食は抜いて、代わりに水分補給を充実
注意点とデメリット
避けるべき落とし穴:
「断食時間明けに、我慢の反動として食べ過ぎてしまい、結果的に太ってしまう可能性がある」と白本クリニックは警告しています。また、空腹時の一番最初に何を食べるかが大事です。血糖値が急激に上がらないように、食物繊維多めのものを摂るようにしましょう。
栄養バランスの重要性:
8時間の食事時間でも、バランスの取れた栄養摂取が必要です。
個人差への配慮:
女性の場合は12時間断食から始めることが推奨される場合もあります。
効果が現れる期間
研究によると、効果の実感には個人差がありますが:
- お通じの改善:2〜3週間程度
- 肌の変化:1〜2か月程度
- 体重減少:継続的な実践により段階的に
2024年の専門家見解
内科専門医による2024年の報告では、「基礎研究レベルでは、細胞の老廃物除去やストレス耐性向上に貢献し、断食による代謝の変化が長寿関連のシグナル伝達経路を活性化させる可能性も指摘されている」(FACTA)とされています。
次回予告
第3回では、オートファジーを活性化する具体的な食品や栄養素について詳しく解説します。
納豆、ザクロ、赤ワインなど、身近な食材に隠された驚きの効果をお伝えします。
特にスパイスとの関連についても詳しくご紹介予定です。
参考文献:
・「16時間断食ダイエット」の効果が出る理由やメカニズムを解説 - LEE
・オートファジーの効果が出るまではどのくらい? - 銀座イグラッドクリニック
・16時間断食や断食ダイエットは効果ある? - 白本クリニック
・Dawn-to-dusk intermittent fasting is associated with overexpression of autophagy genes - Clinical Nutrition (2025)
・内科専門医が実践!「16時間断食」の極意 - FACTA
次回:「オートファジーを活性化する食品・栄養素」をお楽しみに!